日本円ステーブルコイン「JPYC」が正式発行|一般消費者へのメリットは?
2025年10月24日、JPYC株式会社は日本初となる日本円建てステーブルコイン「JPYC(ジェーピーワイシー)」と、その発行・償還プラットフォーム「JPYC EX(エクスチェンジ)」を正式にリリースしました。
10月27日午後1時より受付が開始され、銀行振込を通じて誰でもJPYCを発行できるようになります。
JPYCは「日本円と1:1の価値を持つステーブルコイン」であり、ブロックチェーン上で円と同等の価値を送金・保有できる仮想通貨です。
金融庁に登録済みのJPYC株式会社が発行し、預金や国債を裏付け資産とすることで、100%の価値保証があると説明されています。
しかし、この仕組みは「銀行から日本円を振り込み → ブロックチェーン上でJPYCを発行」という流れであり、実質的には日本円をトークン化するだけ。
つまり、JPYCを手に入れても資産価値は変わらず「銀行口座の円をJPYCという形に置き換えるだけ」となります。
果たしてこれは、私たち一般消費者に何かメリットがあるのでしょうか?
JPYCが描く日本の金融の未来
JPYCの理念は、「誰もが自由に日本円をデジタルで扱える社会をつくる」というもの。
報道では、JPYCが「銀行口座を持たない人でもデジタル決済に参加できる」「Web3時代の金融革命」として紹介されています。
確かに、ブロックチェーン上で円と同等価値を動かせるようになれば、以下のような分野では大きな変化が期待できそうです。
- 海外への送金を即時・低コストで実行可能
- Web3サービス(NFT、DeFiなど)で円建ての取引が可能
- スマートコントラクトにより、契約と支払いを自動化
これらは、銀行システムが介在しない新しい金融の可能性を示しており、グローバル取引やブロックチェーン業界では確かに画期的です。
しかし、JPYCの登場で恩恵を受けるのは主に「Web3事業者」「投資家」「海外との取引を行う企業・個人」であり、日本で暮らす一般消費者とは無縁の世界です。
例えば、「海外送金手数料、高いよ…」と困ったことありますか?
ほとんどの人は、日常生活の中で海外送金が必要になる状況に直面することはほぼほぼありません。つまり、JPYCの描く日本の未来は大多数の日本人には無関係…というのが実際のところです。
一般消費者にとってのメリットとデメリット
ここで改めて考えたいのは、「一般の日本人がJPYCを使う意味があるのか?」という点です。
結論から言えば、多くの人にとって現時点での実用的メリットはほとんどありません。
例えば、海外プロジェクトやWeb3サービスを利用する人やスマートコントラクトを活用する企業にとっては、JPYCによって業務効率化が見込まれることが期待されます。
しかし、それ以外の大多数の一般消費者には、JPYを持つデメリットの方が多い状況です。
- 発行には「銀行振込手数料」+「ブロックチェーンのガス代」が発生
- JPYCを使えるサービスや店舗はほとんど存在しない
- JPYCを管理するにはウォレットや暗号資産の知識が必要
- 法定通貨(日本円)と同価値であり、資産価値は増えない
つまり、「JPYCを発行する」という行為は、日本円をあえて不便な形に変えるだけ。また、JPYCを利用することで得られる利便性よりも、手数料や運用リスクのほうが上回るケースが多いのが現状です。
とはいえ、JPYCの登場は、確かに日本のデジタル金融にとって大きな一歩です。
しかし、それは「銀行がカバーできないWeb3経済圏を補う技術的基盤」に過ぎず、海外送金やブロックチェーン取引に関わらない一般消費者にとっては、JPYCによる直接的な恩恵はほとんどないのが現状です。
現段階のJPYCは、限定された専門領域向けの実験的ツールにとどまっていると言えるでしょう。
